雨と埃(仮題)

透明 陽のささない廊下の空気はどことなく硬く、冷たく、そして青みがかっていた。晴れた空の青さを、雲が太陽をかくした時の翳りをそのままうつしていた。地上三階、トイレの脇の手洗い場、しまりのわるい蛇口からもれる水滴がちいさくしきつめられたタイル…

千年前に書かれた小説を読みながら時の帝など生まれながらに絶大な権力を持ったものは蚊に一度も刺されることなく一生を終えたのかとふと夢想した。肉体をたえず駆けずりまわる血液が一度も肉体の外にもれずに生を閉じたものがいるとすれば、その死因はあき…

『ゆらるゆらり』

味のないガムを噛んでいるみたいだと口にした。ほんとうに味のなくなったような気がした。あれからずっと噛みつづけている、味のないガムを。 生活は平々凡々、やろうとおもえば何でもやれると勘ちがいした時期はとうにとおりすぎて、何にもできないとすべて…