1/7 sun

労働。この日からじぶんが抜けてからのためにポジションチェンジ。ちょっとだけ緊張したけど無事にこなせた。基本的には不器用キングという自己認識だけど、意外とうまくいったので、あれ? おれってこんなんだっけ? となった。まぁ四年近くいて、できない仕事があるって方がおかしいので、当然と言えば当然なんだけど。表面のすべる安いまな板が一枚あって、親方がそれを使用していたので、使い心地はどうですか? と訊くと、にらみともどや顔つかない表情で、腕! と一言返されたのに絶句してしまった。ツッコんでいいのかもわからなかった。こういうところが苦手なんだよな。

仕事終わりにココペリで一杯、いや正確には三杯ひっかけた。昨夜前を通った時は満席だったにもかかわらず店内にだれもいなかった。奥さんが風邪で寝込んでいるとのことだったので、ご主人とふたりでくっちゃべりながらクラフトビールを飲んだ。柚子のフレーバーが効いた箕面ビールの「ゆずホ和イト」がめっちゃ好みで飲みやすかった。あと、じぶんはあまり濃いビールが得意ではないとつくづく実感した。正直腹を満たしに来たところもあったのだが、話しこんでいるのに「料理お願いします」と言うのも気が引けて、注文できなかった。今おもうと簡単なおつまみでも出してもらえばよかった。どこかのタイミングで、もう間もなく休職することをやっと話せた。それを皮切りに飲食業界全般の話になった。職人さんってつぶしが効くようで実はぜんぜん効かない、という話はじぶんの実感するところでもあった。この職に関して言えば国内では暗い見通しとなるだろう。もしかするとほとんどの職がそういった状況にあるのかもしれない。よほどの新規ビジネスでもない限り、業界は目に見えない危機と直面しているのだろうし、痛みのないナイフで徐々に削られてもいるのだろう。もしかすると金沢に住むかもしれない、と告げると輪島出身のご主人は少々おどろいた様子だった。ご主人は基本的に寡黙だし、奥で調理されているので、こうやってがっつり話す機会もなかなかないのだけど、じぶんとしては非常に話しやすい他者である。つまりじぶんとはまったく似ていない人種(元ヤン。高級飲食店でのボーイの経験もあると言う)ということで、そういう人との会話を楽しめるかどうかは相性にかかっている。相性がよければ何を話していても楽しいのだろう、きっと。最後の方になって奥さんが二階から降りてきた。やはり体調は悪そうだった。じぶんの馬鹿笑いがうるさかったのではと思いたずねると、ぜんぜんそんなことはなかったと言ってくれたので胸をなでおろした。奥さんにも仕事を辞める旨をつたえた。小説書くの? と訊かれたので、そのつもりであることと、しばらくしたらまた和食の料理人として、あまり給料のことは考慮せずにはたらくつもりであることを包み隠さず話した。嫌悪感を示さずに聞いてくれたのでうれしかった。流れは忘れたが、一月末のビアフェスにさそってもらえた。返事は保留としておいたが、できれば参加したい。というか、その方がおもしろいだろうという気がする。それに今年はこれまでの行動パターンの逆を行くというのがテーマでもあるのだ。だからおざなりにしてきた下半身を鍛えてもいる。

会計をすませ、帰宅。PCをひらくもそのまま炬燵で寝落ち。朝方になって頭痛と喉の乾きで目覚めた。とても嫌な夢を見た。過去の恋愛に甘い顔をされ、国家権力の不条理に振り回された。夢の中でキレまくっていた。目が覚めて、情けない気もちになった。いつまでおれは過去の恋愛につきまとわれるのだろう。秒速5センチメートルかよ。シャワーを浴びていると、ふと料理界の中上健次になるべきなのではないかと、義務感にも似た心情が湧いた(昼には別のやり方でカフカを志向する、みたいなことをつぶやいたばかりのくせに。舌の根も乾かぬうちに。だからお前は信用できない)。職人の悲哀を、業界そのものの暗さを、強固な筆致と構造分析にも耐えられる物語で切りとる、そういう小説もいいかもしれない。中上健次を読む口実ができた気がした。なんだかんだと中上健次は好きである。頭痛はしこっているが、目が覚めたのでこれから小説を書く。昨日からシームレスに月曜日が始まったという印象。今日は髪を切って銭湯に行きたい。あと読書も。いい加減『存在論的、郵便的』を読み切りたい。

 

完璧な比喩は誰にもとどかない。

土曜日にうかんだことばがやけにしつこく残っているので、書きだしておく。